『精神』

 想田和弘監督の映画『精神』を、十三の第七芸術劇場で観た。b0180333_22552425.jpg
 岡山の精神科診療所を撮ったドキュメンタリーで、2時間を超す長編である。
 「精神科診療所」「現代の赤ひげ先生」を撮ったものだというので、だいぶんと気負って観た。「立派な先生」と奉られてるけど、そうかなぁ?と思うことはたくさんあるし、「現代人の心の・・・」「ストレスが・・・」とか言われても違和感があるし。まぁ、要するに斜に構えて観た。
 途中まで、「これは小規模授産施設で、これはグループホームか?」「この人は患者?職員か?」「この人の病気は?」「何が言いたいんや?」と考えながら観て、途中からどうでもよくなる。どうでもいいことに気づく。
 不親切な映画だ。プロットが一切ないから、どういう「立場」の人か分からない。一コマ一コマが長いので、登場人物の話を聴かないといけない。音楽が一切なく、安易に涙も誘ってくれない。仕方がないから考える。考えることに疲れてくるから、感じる。斜に構えた割りに、「素」になって不思議に引き込まれた。面白かった。

 作り手の主観から、完全に自由になった作品などあり得ない。その上で、観客に「伝わらないかも知れない」ことを恐れないのは、作り手としてすごい勇気だと思う。
 「分かってもらおう」と思うと余計な説明をしたくなる。逆に「分かる奴だけ分かればいい」と開き直ってしまう。受け手に委ねることは難しい。それは、受け手の感性を信じ、尊重することだと思う。
 映画の終盤で、患者さんたちが自作の詩の読みあいをする場面がある。観ていて安心できる、「いい場面」。これで終わらせるのかと思った。でも、次の場面の患者さんは「よく分からない」。それで、映画は終わった。
 映画は「感動」も「不可解さ」も残さなかった。そうだよな、人ってのは、よく分からないもんだわな。そういう感じが残った。
 すごい監督だと思った。

 
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by bag-tentomusi | 2009-07-30 22:58


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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