万灯篭

 東京から友人が来たので、奈良の燈花会へ行く。
 全国的な「灯火ブーム」(ってあるのか?とりあえず、いろんなところで流行っている気がする)に乗っかってか、古都奈良でも何年か前から、奈良公園のあちこちに蝋燭を並べる催しが行われている。私が奈良で過ごしていた子ども時代には、まだなかったと記憶していて、「ほー、奈良も洒落たことを」などと思っていた。わざわざ出かけるのは癪に障る気がしなくもないけど、「東京からの観光客を連れて来ている」という大義名分により、浴衣を着て張り切って参加(笑)。

b0180333_0152218.jpg 日暮れ後の奈良公園は、しっとりとしていて懐かしい。子どもの頃、なぜか毎年「食事券」をいただけたので、年に一度は奈良ホテルの隣にある「菊水」というフレンチレストランで食事をするのが我が家の行事だった。うちの祖母と幼馴染だというおばあさんが給仕さんで、白いエプロンをひらひらとつけて、こちらがずいぶん大きくなってからも私と弟を「お譲ちゃん」「ぼん」と呼んでくれた。フロアに背筋の伸びた若い颯爽としたスタッフはいなかったけれど、なんとなく品のあるおばあさんたちだった。なんだかいい時代だったんだなぁと思う。そんな「菊水」からの帰り道の奈良公園とか。観光客が去った、鹿の鳴く奈良公園とか。

 燈花会は、個人的には「やりすぎ」感があった。遠目に見た方が綺麗だし、もう少し控えめな方が好み。
 それよりもと言うか、それに比べてと言うか、年に一度しか行われない伝統行事である春日大社の万灯篭がすばらしかった。
 小さな灯篭に蝋燭をともしてもらって、街灯のない参道を歩く。参道が狭くなると、石の灯篭がゆらゆら。二列三列と奥行きのあるばらつきで、曲がりくねった坂道に並ぶ灯篭は、妖艶な雰囲気。あー、あそこに妖怪がいるなと思う。燈花会の明るい蝋燭には表現できない世界。燈花会に妖怪はいない。
 一年でこの日しか入れない春日大社の中の釣灯篭は、切り絵の世界。一つ一つの模様が影絵になって、これは信仰っていうか「遊びごころ」だよなーなんて思う。

 虫の声、切り絵、気持ちのいい風・・・。なのに、「立ち止まらないでくださーい。写真を撮ったら進んでくださーい」という拡声器の声が響くのが残念。とても残念。そんなに混んでないんやから、そない必死にならんでも。
 中島義道さんの『うるさい日本の私』を思い出した。
 いいじゃん、少しくらいゆっくり眺めても。列が本当に詰まったら、そっと肩をたたいて「少し進みましょか」ってささやいてくれたらいいのにさ。
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by bag-tentomusi | 2009-08-14 00:11


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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