「着る」ということ

 休みの日に、着物を着て過ごしてみたりしている。
 祖母の箪笥から引き抜いてきた着物と帯を、身にまとう。
 帯を締めるとき、後ろに手を回して「て」を仮止めする所作や(私は、前でお太鼓を作るので)、仮紐をすっと抜き取るときの所作が、なんだかとても潔く思えて、好き。江戸時代の浮世絵の一場面を思い浮かべたりする(大袈裟)。
 まだ、一応は納得いく形で着るまで1時間弱かかるけれど、ああそうか、「着る」というのはこういうことか、とか思う。
 そういう日は、きちんとご飯を作ったりする。 
 日常に、ちゃんと手間をかけるということ。豊かさ。

 よく晴れた日曜の京都へ、3人の着物師匠に連れられて着物の展示会へ行った。
 「着物の展示会」!活字にしたらすごいセレブリティーな響きである。
 この日は、祖母が昔、誰かにもらった布を染めたという紅型っぽいピンクの着物を、後年さらに上から格子柄に染め直した小紋を着て行く。染みができたり歳を重ねたりすると、染め直して着続けることができるのは、着物のすごいところのようだ。

 私は祖母の着物を着ているけれど、それは私にとって「大好きなおばあちゃんの着物」といった類のものでは全くないし、着物につまった思い出も、そんなにきれいな思い出ではない。祖母も曾祖母からいろいろ苛められたらしいのに、曾祖母の着物を受け継いでいるし、着付けも曾祖母譲りのものだと言う。そんなふうにして今、年月の流れのなかで私が同じように彼女たちの着物に袖を通していることは、何だかとても興味深いことのように思う。

 師匠たちとともに「そばの実 よしむら」で昼酒を楽しんだ後、いざ会場へ。
 それは落ち着いた畳のお部屋で、ごろごろと反物が転がっている。
 高松にある「着物ギャラリーあん」さんが行っている展示会で、お母様と娘さんがお二人でされているのだけれど、嫌味な商売気が全くなくて、それはもう、さながら「接近可能な美術館」という感じ。b0180333_1145146.jpg
 紬の反物をくるくるーっと広げてみて、ひゃーきれいな柄。帯もあわせてみて、ほら、こんな帯揚げにしたら雰囲気かわりますよ。これは、木綿で、これはウールで、こういうときに着るの。
 師匠たちに温かく見守られながら、そういう作業を何回もさせてもらう(普通、「展示会」ってのはそんなことは出来ないらしい)。「着物」というより「布」との対話という感じなのかな。きっと、お母さんと娘さんは、布を愛してるんだと思う。本気で、呉服屋さんになりたいと思ってしまった。

 そして、ついに初めての「お誂え」を体験。
 歴史に新たな一枚が加わりました、とさ(大袈裟)。

 
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by bag-tentomusi | 2009-11-15 01:22


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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