西区の事件と相談援助について、まじめに語る

 大阪市の西区で、若いお母さんが子ども二人を殺してしまう事件が起きた。
 子どもたちも、お母さんも、早く「見つけて」欲しかったことやろう。

 今日の夕刊で、その事件を受けて大阪市が、市の児童相談所に警察官を配置することにした、とあった。「全国でも珍しいこと」とのこと。緊急通報があった場合は、まずは最寄の消防署員が駆けつける仕組みにもするらしい。
 
 今回の事件で、いろんな意見があると思うけれど、何度か訪問をした相談員はさぞ辛かろうと、どうしても思う。それを機に、自分たちの職場に警察官が「詰める」ようになることを、どんな思いで眺めるのだろうか。

 対人援助職と呼ばれる仕事をしていて、警察の介入を依頼することは年に数回だけれども、ある。しのごの言わずに救急車に乗せることもある。連れて行かれる後姿を見ては毎回、本当によかったのかと頬の奥が痛くなるし、逆に依頼しても全く動いてくれない「公的機関」に声が震えることもある。
 「危機介入」は、援助職の最も難しく最も大切なことの一つだと言われるけれど、例え「命」を理由にしても、本当にそれが「今」である必要があったのか、それは絶対にわからない。これで良かったと思うことなんて、きっとどこの現場でもないんじゃないだろうか。悩むし責める。
 でも、悩まなかったら、わかってしまったら、それは「終わり」だと思う。悩まなくてはいけないし、考えなくてはいけないし、そうやって自分の勘を磨いていくことが、せめてもの償いのようにも思う。

 今回のことに関して。
 児童虐待防止法では、職員は対象者宅へ踏み込んでいいことになっているし、「警察官の同行」がちゃんと記載されている。現場で、警察通報と介入が必要なときは必ずあるだろう。場合によっては、まずは救急通報という判断もあるだろう。信頼関係やプライバシーやらを踏みにじるリスクを犯してでも、それをしないといけないときは、どうしてもある。
 けれども、そこにはやはり、一つの見えない壁がなくてはいけないと思うのだ。「自分はそれをひとつ踏み越えたのだ」という自覚がないまま、絶対にやっちゃいけない。そして相談員(しかも公務員だし)には、そうやって悩んで苦しむ責務と自由と余裕が、ちゃんと与えられてないといけないと、私は思う。
 今回、警察官が児童相談所に常時「詰める」ことと、現場の相談員が判断してから警察に同行を依頼することとで、そんなにタイムラグが出来るとは思えない(同行依頼しても、警察官がすぐに動かなかったら話は別だけど)。でも、見えない壁が低くなってしまったことは、確かだ。

 実際には、自分の分野で長いこといると、「これは死ぬな(殺すな)」という勘が働くようになる(私はまだまだ)。電話対応だと、数分で状況判断と決断をしないといけないけれど、それは経験値を上げるしかどうしようもない。けれども、公務員で「相談員」と呼ばれる人たちは、多くが非正規職員や契約雇用で、ギリギリの人数でやっている。2年の任期の人に、「適切な危機介入」を求めるほうがおかしい。

 もしかしたら今回、児童相談所の職員は警察官が「詰めて」くれて、ホッとするかも知れない。
 追い込まれたとき、孤立無援が辛いのは、お母さんだけじゃなくて相談員も同じだから。でもその「ホッ」に、私は危うさを感じる。大阪市は、言い訳みたいに警察官を手配するなら、相談員の数を増やすのが先じゃないだろうか。
 
 なんの痛みも迷いもなく、警察官が登場するような社会は、私はイヤだなぁ。
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by bag-tentomusi | 2010-08-11 00:55


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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