祝島4

 昨日ようやく、纐纈(はなぶさ)あや監督の映画『祝(ほうり)の島』 を観た。
 立ち見になったら嫌だなと思って、開場と同時に行ったのに、ガラガラ・・・。結局10人くらいの観客で、ほとんどが何て言うか、「以前から生協活動してそうな」おばさまたち(偏見すみません)。うーむ。いいんですけど、同年代、求む。
                            ↓ 奥に見えるのが、建設予定地
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  淡々と続く、ありふれた日常。
 「原発がいかに恐ろしいか」ではなく、「そこがいかに美しいか」。
 そんな視点に立った映画だった。
 そして島の人たちの視点も一貫して、それと同じなのだと思う。
 「中電が来て、かしこなった」と言う彼女たちは、闘うためにたくさんの知識や理論を学んでもこられたのだろう。けれども、30年間も続けてこられた原動力、私が島で見つけた「なぜ」の答えは、「ここがいかに美しいか」、きっとそれにつきるのだと確信する。
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 旅行中、徳山から周防大島へ向かう道の十字路で、「上関原発反対」の旗を持って行きかう車にずっと頭を下げ続けている2人の男性に出会った。5年前から毎日、ただひたすらそこに立ち続けているのだと言う。
 映画の中では、島の女性が唇を震わせながら埋め立ての作業員に叫ぶ。「あんたら、命がけで何かをしたことあるか」と。
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 実際、上関町では祝島漁協を省くすべての漁協が、莫大な補償金をすでに受け取ってしまっている。勝手に口座に振り込むという姑息な手を使われながらも、すべてを突き返してきているのは祝島漁協だけだ。ところが最高裁はこれに関して、「他の漁協が受け取ったのだから、祝島も受け取ったも同然」といった判決をしたという。
 それでも映画のなかで島の人は言うのだ。「原発によって、町が引き裂かれたことが一番悲しい。反対派も推進派も、本当は同じ思いでいると思う」と。
 また、祝島意外の地区では町議選があると、反対派の演説には誰一人として応援に出て来ないとという。一方で推進派の演説には人だかりができるのだが、いざ投票をしてみると、ずっと多くの原発反対の票が入るのだそうだ。表立って「反対」は言えない空気があるのだろう。過去には、選挙のために中電によって不正に転入届が出されたり、投票所に黒服の男たちが見張りに立ったりということがあった。このあたりは、「はまや旅館」さんのロビー?に置いてあった写真集、『中電さん、さようなら―山口県祝島 原発とたたかう島人の記録』(那須 圭子 創史社 2007)が詳しい。そんな、ヤクザまがいのことまでして建設しようとする原発が、ろくなものだとは、とても思えないのだが。
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 先日のチャリティーフェスで、海援隊の武田鉄也が『母にささげるバラード』を歌う前に、彼自身の姉が神戸で被災したときの母のエピソードを紹介していた。武田母は、「私らは日本が戦争に負けた日も、ただ黙々と働いた。それが今の日本をつくってきた」と、姉を叱咤激励したのだそうだ。これは震災後、何かと聞かされる話でもある。「日本人は、どんなときも働いて、復興を成し遂げてきた」と。
 祝島のお母さんも、それと同じような、でもちょっと違うことを言っている。
 「私たちは戦争に負けて苦しいときも、この海と山のおかげで、生きてくることができた」と。そして「私たちもそうして守ってもらったのだから、子や孫にも同じように残してあげたい」と。

 山口県知事は2008年、中電に対して田ノ浦の埋め立て許可を出してしまった。
 そして、3.11。
 工事は一時中断したものの、今も「地質調査」という名の発破作業は続いているという。3月末には中電は、「工事は今後も継続していく」という回答を示したそうだ。「ますます安全な原発を・・・」
 「そんなこと、福島の人らを目の前にして、同じこと言うてみい」と原さんは怒っていた。
 あんたらにも、故郷があるやろう、と私は思う。

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 祝島の人たちは30年前から休まず、毎週月曜日に反対デモで島内を歩いている。

 「政府は、私たちが死んでいくのをただ、待っているとしか思えません」
 そう言った元従軍慰安婦のハルモニ(おばあさん)がいた。彼女たちも毎週水曜日に、日本大使館前に立ち続けている。
 今回、私はかつて出会ったハルモニと島の人が重なって仕方がなかった。
 国や電力会社は、高齢化した島で、島の人たちが死んでいくことをただじっと、待っているように思えてならない。
 
 彼女たちが子や孫に命を張って残してくれたものは、「彼女たちの海と山」だけではない。
 
 そして子や孫とは、私たちのことだ。
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by bag-tentomusi | 2011-05-17 02:26


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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