「田中さんはラジオ体操をしない」

 友人からの強い勧めによって、映画『田中さんはラジオ体操をしない』を鑑賞する。

 オーストラリアの監督の作品だが、日本の「沖電気」で30年前、始業前に「ラジオ体操をする」ことを拒否して会社を解雇された「田中さん」のドキュメンタリー。
 会社の経営者が替わり、1350人の従業員が解雇されることになる。そんな彼らを支えようとした田中さんたち社員に対して、次第に差別やいじめが始まる。「彼らのビラを受け取るな」「口をきくな」「仕事をさせるな」「親睦会に呼ぶな」「お土産をあげるな」・・・。ラジオ体操は言わば会社側の「踏み絵」。そんなどうでもいいことに「黙って従う」ことで、会社への忠誠心を示させるようなことに抗議して、田中さんは席に着席したまま、ラジオ体操には参加しなかった。結局、遠隔地への異動を命じられ、それを拒否したという理由で解雇。その翌日から彼は、今日までずっと、会社の門の前に立ち続け、たった一人でも抗議行動を続けている。毎日、歌を歌い、月に一度は座り込みをし、会社の株主総会には毎年参加しては暴力的に排除され、それを不当だとして裁判に訴える。そんな彼を追った映画だ。

 この日の上映会では、上映後に田中さんご本人が登場して、ライブとお話つきだった。
 彼の活動には、国歌斉唱で起立しなかったという理由で停職処分を受けた、東京都の高校の先生なんかが加わようになるのだけれど、田中さんも彼女も繰り返し訴えていることは、「ラジオ体操が嫌いなわけでも、国歌が嫌いなわけでもない。そうではなく、『やらない、歌わない』という選択をした人が差別を受けるのは、おかしいと思うからやらないし立たない。『何も考えずに黙って従え』ということの踏み絵だし、それは民主主義ではない」ということ。それは、とても小さな「闘い」のようで、「どうでもいいこと」のようだけれど、その最初の小さな「どうでもいいこと」をやり過ごしてしまうことが、次の「踏み絵」を生む。目の前の理不尽に、徹底してこだわり続ける彼の姿勢は、なんていうか、すごく、本質的に感じた。
 「もっと頑固になるべきだ」と、田中さん。例え「偏屈」と言われようとも。

 そして、その当の田中さんはと言うと、30年の間にはまわりに素敵な人たちが集まってきていて、映画中でもライブでも、やたら生き生きして楽しそうなのだ。 
 私はこの映画、自分の周囲で2年ほど前に起こったことをどうしても思い出してしまいながら観たのだけれど、あのとき自分は、「やられる側」であって良かったと、つくづく思った。
 
 この3連休は毎日、誰かと遊んで過ごした。幸せな休日であった。
 あのとき、「踏み絵」を踏まなくて良かった。それとこれとは、あんまり関係のないことのようだけれど、すごく関係していることのようにも思う。
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 上映後、パンフレットにサインをいただいたところ、「自分にやさしく」と書いてもらった。
 私は、田中さんの自作の歌詞にあった、
 「人らしく生きよう。
 あなたはもっとやさしくて、あなたはもっと強い」
 って言葉が、好きだったな。
 リクエストすればよかった(笑)。
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by bag-tentomusi | 2011-10-11 00:43


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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