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北陸うまいもん道中 その3

(3日目)

 ぐっすり寝て起きたら、世間はちょっとあったかいみたいで、ホテルの窓から見える駐車場の雪が、心もち少なくなっていた。
 大浴場の朝風呂に行こうと思ったが、ダラダラしていたので間に合わず断念。
 昨日、ひがし茶屋街の「ふ」屋さんで購入した「ふ饅頭」を、朝ご飯にいただく。昨日お店を訪れたときはとっくに夜の帳が落ちていて、店の灯りの中で一日の売り上げを数えておられる時間だった。「おしまいですか?」と聞いたら、快く「どうぞ」と招き入れてくださり、「ふ饅頭」がお勧めで今日はたまたま売れ残っているとおっしゃるので、一袋いただいて帰ったものだ。ねちっとしたよもぎふの中に、上品な甘さのこしあんが入っていて、昨日のおでんがまだ残っていそうな胃袋にも、するっと入ってきて美味しい。

 この日は午後から、先輩や先輩のお子たちと「21世紀美術館」で待ち合わせをしているので、それまでは町を歩いてみることとする。昨日「あうん堂」さんで購入した「そらあるき 昼マップ」と「夜マップ」。眺めているだけで楽しいマップだが、お日様が明るいうちは、「昼マップ」が大活躍。2冊セットで330円。
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 まずは金沢駅を通り抜けて、近江市場へ。昨日の手毬椎茸「能登115」は、立派なものは4個3500円くらいで売っていた。何がどうして、あんなに大きく育ってしまったんだろうか。まるででかいマッシュルームである。あとはとにかく、魚が安い。先輩は「大阪は魚が高い」と言っていたけれど、そりゃあ、ここと比べれば高いですわな。買って帰りたい衝動をどうにか抑えて(食べきれないし、持って帰れない)、いろいろ見てまわる。地場物で、見知らぬお魚もいろいろいた。こういう市場が近くにあると、いいですね。

 近江市場を出たら、尾張町商店街をトコトコ歩く。気になった店があると、あっちの歩道、こっちの歩道とウロウロするので、危なっかしい。Amaortの長靴が、いい感じに活躍してくれる。
 今日のお昼ごはんは、尾張町商店街沿いにある『ニワトコ』さんへ。
 こちらの店主さんは昨日、「あうん堂」さんに遊びに来られていて、「長平」さんを勧めてくださった方だ。同じ年くらいの女性で、最近ご自分のお店を持たれたとうかがった。なんだか応援したい感じがしたし、美術館へ向かう通り道だったので、訪れてみることとした。
 『ニワトコ』さんは通りに面したガラス張りの、清潔な感じのお店。私は間口の小さい、怪しい感じのお店って好きだけれど、やはり1人で初めて訪れるときは、こういうお店の方が安心して入れる。古くはないけど新しくもない、あったかくて落ち着ける雰囲気である。まだお客さんは誰もいなくて、昨日のお姉さんのお母さんと思われる方が注文を取りに来てくださったので、週代わりのご飯を注文した。

 若い女性が始めたお店で、「見た目とか雰囲気はかわいいけど、味は普通だよね・・・」ということは割とあったりするので、正直なところあまり期待して行かなかった。
 この日のお料理は、鱈の子と加賀蓮根のお団子の煮付けに生の木耳を添えたもの、ひじきの煮物、かぼちゃのサラダ、お味噌汁、白米。
 鱈の子には、新鮮そうなおろし生姜が添えてある。一口いただいて、「ふわぁーっ」と小さく口にする。
 美味しい。加賀蓮根のお団子もいただく。「ふわぁーっ」。美味しい。
 たいして料理に詳しいわけでもなく、基本的に何でも「美味しい」と思う方だが、そんな私でも、ちゃんと料理を学んだ本当にお料理の上手な方なんだなぁと分かる。「町のランチ」としてはびっくりの、一本筋の通ったようなお料理だった。
 ご飯はお代わり自由だそうだが、控えめに少しだけ盛られている。それがおかずへの愛情のような気がして、お代わりはせず、ちょっとずつ時間をかけてゆっくりといただく。気がつくと、軽く1時間は経っており、食後の「ニワトコジュース」をいただいて、ごちそうさま。

 さて、待ち合わせの時間にすっかり近づいてしまい、と言ってたいして急ぎもせず、雪にしっぽりと覆われた金沢城公園をさすらう。公園全体がもっこりして、真っ白に覆われていて、「もしも私が子リスだったら、どこまでもかけて行きたくなるような、そんな雪原でした。人間だからやめときましたけど。。。」と先輩に情景描写をしたら笑われた。でも本当に雪の上をひょいひょいかけられたら、気持ち良いだろうなと思う。
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 「21世紀美術館」にて、先輩とその子どもたちと集合。手に触れて遊べるものも多く、息子くんと遊んだりして見てまわる。
 何というか、「ムダ」の多い美術館であった。白い箱の中にちょこちょこ現れる展示室。無料空間だけでもかなり楽しめるし、外側は一面ガラス張りになっていて、一日中外を見て過ごすこともできる。
 無料空間で「タレルの部屋」という部屋があり、石堂のような部屋で天井がぽっかり開いているだけの部屋なのだが、ここは夜10時まで開放しているのだそうだ。刻一刻と変わる空の様子を、石堂のお部屋でただぼんやりと眺めながら10時まで過ごすこともできるのだ。仕事帰りとかに、ちょっと、やってみたい。
 しかもこの美術館、金沢市が経営している。まったく、どこかの市長も見習って欲しいものである。

 美術館には5時過ぎまでいて、息子くんと雪遊びをしたのち、最後の夜をしめくくるべく、今度は「そらあるき 夜マップ」を手に、行動を開始。
 先輩によると金沢市内には銭湯がたくさんあって、色のついた温泉が普通に涌いているらしい。しかも「このあたりは茶色で・・・」とか、場所によっても水質が違う様子。「茶色のお湯」「銭湯なのに露天風呂がある」というのに惹かれて、町外れにある「兼六温泉」を目指す。
 歩くこと30分ほど。普通の町中に「兼六温泉」はあった。店構えも普通の銭湯である。450円。
 「え?池?」って感じの露天風呂もちゃんとあり、ちょっとぬるいけど、いくらでも浸かっておられる心地よさ。温泉水もちゃんと飲めるようになっている。手ぬぐい以外のお風呂セットは何も持っていなかったのだが、温泉水だけでツルツルすべすべ、化粧水いらず。こんなお湯に毎日浸かっている人は、そりゃぁべっぴんさんになれるでしょうよ。
 銭湯には、「500円で骨盤修正しますよ」という整体師のお兄さんが暇そうに座ってたので、骨盤修正までしてもらい(「またえらく、マニアックな銭湯に来たんですね。地元の人しか来ませんよ」と言われた)、身体がホクホクになったところで、再びビールを求めて街中へと彷徨い出ることとなる。
 
 で、最後の晩餐に行ったのが、『ミートブラザーズ』さん。
 ミートだけに、焼肉屋さん。
 金沢まで来て焼肉?と思うところだが、何を隠そう、この3日間でどこが一番良かった?と聞かれたら、悔しいかな『ミートブラザーズ』と答えてしまうであろう。そんな焼肉屋さんなのだ。

 『ミートブラザーズ』も、前日に『あうん堂』のご主人に勧められた。最新号の『そらあるき』の特集が、「昭和レトロな屋台横丁 金沢中央味食街」。昭和41年から続くという飲み屋街だ。そこの『ミートブラザーズ』にぜひ行くようにと『あうん堂』ご主人が勧めるものだから、えーい、豪遊3日目、行ってまえ!と思って、金沢の中心街「香林坊」裏の怪しげな通りを「味食街」探して進むこととなった。ちなみに、事前に「怪しい」と聞いていたから、大阪基準の「怪しい」に脳内チャンネルを設定して行ったため、「確かに昭和やけど、めっちゃ健全やん」とつぶやくこととなったわけだが。
 「金沢中央味食街」は、映画のロケに使われそうな「いかにも昭和」な味食街で、まさに小屋のような小さな飲食店が、肩を寄せ合って軒を連ねている。『ミートブラザーズ』を見つけたものの、引き戸も小さくて、紹介がなければさすがに入っていなかっただろうという店構え。えいやと中に入ったら、狭い店内にL字形のカウンター、席の前にガスコンロがあって、カウンターの中にお兄さん(肉肉しくない)が一人。あ、不倫ですか?って感じの男女のお客が一組だけだった。一番端っこの席に、よいしょと座る。
 
 さて。ちょっと怪訝な顔をされたような気もするが、気にせず、とりあえず、生ビール。
 牛タン。ハラミ。
 隣りのおっちゃんのマネして、塩キャベツ。
 生ビールおかわり。
 シロ。砂肝。
 ブラカルビ(赤身のカルビ)。
 白ご飯。

 肉は、注文の度にお兄さんが(くどいけど、肉肉しくない)冷蔵庫から出して切って出してくれる。
 肉の表面だけちょっと「熟成した」感じに色が変わっていて、いかにも美味そう。
 どう見ても、サッと焼くだけでいけそうなので、一枚ずつ焼いては食う。うまー。ビール。うまー。

 途中からお隣には、常連っぽいおじさん2人組が来ていた。
 店のお兄さんは、「肉以外、何のこだわりもありません」って感じで、客も心得ていて、「今忙しいだろうから、後で注文するね」とか、「こんなの(もろキューとか)メニューに書いてるけど、どうせないんでしょ?」とか言って、お兄ちゃんをからかっている。私にも適当な距離でやさしくて、いい店で。近くに住んでたら、確実に常連になっていたと思う。

 お会計は、これだけ食べて4000円弱。
 帰り、席を立ってから外に出るには、どうしても他のお客に立って道を空けてもらわないといけない。それくらい狭いのだ。
 「すいません。すいません」と言って外に出たら、「店が悪いんだから~。ここは帰したくない作りになってる」と言って、道を明けてくれた。
 
 引き戸を閉めようとしたら、お兄さんが「おやすみなさーい」。
 「おやすみなさい!」。
 いいとこですね、また来ますね。と心の中で言って、宿に帰った。
 明日、大阪に帰ります。
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  21世紀美術館にて。溺れる。
by bag-tentomusi | 2012-02-14 15:03


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


by bag-tentomusi

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