北陸うまいもん道中 その3

(3日目)

 ぐっすり寝て起きたら、世間はちょっとあったかいみたいで、ホテルの窓から見える駐車場の雪が、心もち少なくなっていた。
 大浴場の朝風呂に行こうと思ったが、ダラダラしていたので間に合わず断念。
 昨日、ひがし茶屋街の「ふ」屋さんで購入した「ふ饅頭」を、朝ご飯にいただく。昨日お店を訪れたときはとっくに夜の帳が落ちていて、店の灯りの中で一日の売り上げを数えておられる時間だった。「おしまいですか?」と聞いたら、快く「どうぞ」と招き入れてくださり、「ふ饅頭」がお勧めで今日はたまたま売れ残っているとおっしゃるので、一袋いただいて帰ったものだ。ねちっとしたよもぎふの中に、上品な甘さのこしあんが入っていて、昨日のおでんがまだ残っていそうな胃袋にも、するっと入ってきて美味しい。

 この日は午後から、先輩や先輩のお子たちと「21世紀美術館」で待ち合わせをしているので、それまでは町を歩いてみることとする。昨日「あうん堂」さんで購入した「そらあるき 昼マップ」と「夜マップ」。眺めているだけで楽しいマップだが、お日様が明るいうちは、「昼マップ」が大活躍。2冊セットで330円。
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 まずは金沢駅を通り抜けて、近江市場へ。昨日の手毬椎茸「能登115」は、立派なものは4個3500円くらいで売っていた。何がどうして、あんなに大きく育ってしまったんだろうか。まるででかいマッシュルームである。あとはとにかく、魚が安い。先輩は「大阪は魚が高い」と言っていたけれど、そりゃあ、ここと比べれば高いですわな。買って帰りたい衝動をどうにか抑えて(食べきれないし、持って帰れない)、いろいろ見てまわる。地場物で、見知らぬお魚もいろいろいた。こういう市場が近くにあると、いいですね。

 近江市場を出たら、尾張町商店街をトコトコ歩く。気になった店があると、あっちの歩道、こっちの歩道とウロウロするので、危なっかしい。Amaortの長靴が、いい感じに活躍してくれる。
 今日のお昼ごはんは、尾張町商店街沿いにある『ニワトコ』さんへ。
 こちらの店主さんは昨日、「あうん堂」さんに遊びに来られていて、「長平」さんを勧めてくださった方だ。同じ年くらいの女性で、最近ご自分のお店を持たれたとうかがった。なんだか応援したい感じがしたし、美術館へ向かう通り道だったので、訪れてみることとした。
 『ニワトコ』さんは通りに面したガラス張りの、清潔な感じのお店。私は間口の小さい、怪しい感じのお店って好きだけれど、やはり1人で初めて訪れるときは、こういうお店の方が安心して入れる。古くはないけど新しくもない、あったかくて落ち着ける雰囲気である。まだお客さんは誰もいなくて、昨日のお姉さんのお母さんと思われる方が注文を取りに来てくださったので、週代わりのご飯を注文した。

 若い女性が始めたお店で、「見た目とか雰囲気はかわいいけど、味は普通だよね・・・」ということは割とあったりするので、正直なところあまり期待して行かなかった。
 この日のお料理は、鱈の子と加賀蓮根のお団子の煮付けに生の木耳を添えたもの、ひじきの煮物、かぼちゃのサラダ、お味噌汁、白米。
 鱈の子には、新鮮そうなおろし生姜が添えてある。一口いただいて、「ふわぁーっ」と小さく口にする。
 美味しい。加賀蓮根のお団子もいただく。「ふわぁーっ」。美味しい。
 たいして料理に詳しいわけでもなく、基本的に何でも「美味しい」と思う方だが、そんな私でも、ちゃんと料理を学んだ本当にお料理の上手な方なんだなぁと分かる。「町のランチ」としてはびっくりの、一本筋の通ったようなお料理だった。
 ご飯はお代わり自由だそうだが、控えめに少しだけ盛られている。それがおかずへの愛情のような気がして、お代わりはせず、ちょっとずつ時間をかけてゆっくりといただく。気がつくと、軽く1時間は経っており、食後の「ニワトコジュース」をいただいて、ごちそうさま。

 さて、待ち合わせの時間にすっかり近づいてしまい、と言ってたいして急ぎもせず、雪にしっぽりと覆われた金沢城公園をさすらう。公園全体がもっこりして、真っ白に覆われていて、「もしも私が子リスだったら、どこまでもかけて行きたくなるような、そんな雪原でした。人間だからやめときましたけど。。。」と先輩に情景描写をしたら笑われた。でも本当に雪の上をひょいひょいかけられたら、気持ち良いだろうなと思う。
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 「21世紀美術館」にて、先輩とその子どもたちと集合。手に触れて遊べるものも多く、息子くんと遊んだりして見てまわる。
 何というか、「ムダ」の多い美術館であった。白い箱の中にちょこちょこ現れる展示室。無料空間だけでもかなり楽しめるし、外側は一面ガラス張りになっていて、一日中外を見て過ごすこともできる。
 無料空間で「タレルの部屋」という部屋があり、石堂のような部屋で天井がぽっかり開いているだけの部屋なのだが、ここは夜10時まで開放しているのだそうだ。刻一刻と変わる空の様子を、石堂のお部屋でただぼんやりと眺めながら10時まで過ごすこともできるのだ。仕事帰りとかに、ちょっと、やってみたい。
 しかもこの美術館、金沢市が経営している。まったく、どこかの市長も見習って欲しいものである。

 美術館には5時過ぎまでいて、息子くんと雪遊びをしたのち、最後の夜をしめくくるべく、今度は「そらあるき 夜マップ」を手に、行動を開始。
 先輩によると金沢市内には銭湯がたくさんあって、色のついた温泉が普通に涌いているらしい。しかも「このあたりは茶色で・・・」とか、場所によっても水質が違う様子。「茶色のお湯」「銭湯なのに露天風呂がある」というのに惹かれて、町外れにある「兼六温泉」を目指す。
 歩くこと30分ほど。普通の町中に「兼六温泉」はあった。店構えも普通の銭湯である。450円。
 「え?池?」って感じの露天風呂もちゃんとあり、ちょっとぬるいけど、いくらでも浸かっておられる心地よさ。温泉水もちゃんと飲めるようになっている。手ぬぐい以外のお風呂セットは何も持っていなかったのだが、温泉水だけでツルツルすべすべ、化粧水いらず。こんなお湯に毎日浸かっている人は、そりゃぁべっぴんさんになれるでしょうよ。
 銭湯には、「500円で骨盤修正しますよ」という整体師のお兄さんが暇そうに座ってたので、骨盤修正までしてもらい(「またえらく、マニアックな銭湯に来たんですね。地元の人しか来ませんよ」と言われた)、身体がホクホクになったところで、再びビールを求めて街中へと彷徨い出ることとなる。
 
 で、最後の晩餐に行ったのが、『ミートブラザーズ』さん。
 ミートだけに、焼肉屋さん。
 金沢まで来て焼肉?と思うところだが、何を隠そう、この3日間でどこが一番良かった?と聞かれたら、悔しいかな『ミートブラザーズ』と答えてしまうであろう。そんな焼肉屋さんなのだ。

 『ミートブラザーズ』も、前日に『あうん堂』のご主人に勧められた。最新号の『そらあるき』の特集が、「昭和レトロな屋台横丁 金沢中央味食街」。昭和41年から続くという飲み屋街だ。そこの『ミートブラザーズ』にぜひ行くようにと『あうん堂』ご主人が勧めるものだから、えーい、豪遊3日目、行ってまえ!と思って、金沢の中心街「香林坊」裏の怪しげな通りを「味食街」探して進むこととなった。ちなみに、事前に「怪しい」と聞いていたから、大阪基準の「怪しい」に脳内チャンネルを設定して行ったため、「確かに昭和やけど、めっちゃ健全やん」とつぶやくこととなったわけだが。
 「金沢中央味食街」は、映画のロケに使われそうな「いかにも昭和」な味食街で、まさに小屋のような小さな飲食店が、肩を寄せ合って軒を連ねている。『ミートブラザーズ』を見つけたものの、引き戸も小さくて、紹介がなければさすがに入っていなかっただろうという店構え。えいやと中に入ったら、狭い店内にL字形のカウンター、席の前にガスコンロがあって、カウンターの中にお兄さん(肉肉しくない)が一人。あ、不倫ですか?って感じの男女のお客が一組だけだった。一番端っこの席に、よいしょと座る。
 
 さて。ちょっと怪訝な顔をされたような気もするが、気にせず、とりあえず、生ビール。
 牛タン。ハラミ。
 隣りのおっちゃんのマネして、塩キャベツ。
 生ビールおかわり。
 シロ。砂肝。
 ブラカルビ(赤身のカルビ)。
 白ご飯。

 肉は、注文の度にお兄さんが(くどいけど、肉肉しくない)冷蔵庫から出して切って出してくれる。
 肉の表面だけちょっと「熟成した」感じに色が変わっていて、いかにも美味そう。
 どう見ても、サッと焼くだけでいけそうなので、一枚ずつ焼いては食う。うまー。ビール。うまー。

 途中からお隣には、常連っぽいおじさん2人組が来ていた。
 店のお兄さんは、「肉以外、何のこだわりもありません」って感じで、客も心得ていて、「今忙しいだろうから、後で注文するね」とか、「こんなの(もろキューとか)メニューに書いてるけど、どうせないんでしょ?」とか言って、お兄ちゃんをからかっている。私にも適当な距離でやさしくて、いい店で。近くに住んでたら、確実に常連になっていたと思う。

 お会計は、これだけ食べて4000円弱。
 帰り、席を立ってから外に出るには、どうしても他のお客に立って道を空けてもらわないといけない。それくらい狭いのだ。
 「すいません。すいません」と言って外に出たら、「店が悪いんだから~。ここは帰したくない作りになってる」と言って、道を明けてくれた。
 
 引き戸を閉めようとしたら、お兄さんが「おやすみなさーい」。
 「おやすみなさい!」。
 いいとこですね、また来ますね。と心の中で言って、宿に帰った。
 明日、大阪に帰ります。
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  21世紀美術館にて。溺れる。
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# by bag-tentomusi | 2012-02-14 15:03

北陸うまいもん道中 その2

(2日目)

 8時49分金沢駅発の「しらさぎ」舞鶴行きに乗る。
 福井駅に9時36分着。9時50分発の京福バスに乗車。
 目指すは「雪の永平寺」。

 バスに揺られること30分。驚くほどあっけなく到着してしまった。
 昔の人は永平寺にお参りするために、それこそ死ぬ思いでやって来たことだろうに。
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 まずは社務所のようなところで拝観料500円のチケットを買い、靴をぬぐ。それから広間で小僧さんより「拝観の注意点」を聞いてから順路を進むこととなる。修行中の小僧さんを何人かお見かけしたけれども、みんな裸足。寒かろうなぁ。

 永平寺は下から、山門、中雀門、仏殿、法堂と続く。山門からくぐってお参りできるわけではなく、その横に屋根付きの長い階段廊下があり、参拝客はそこを通ってお参りをする。
 法堂の入り口に腰掛けてから仏殿を眺めると、屋根にこんもりと雪がつもっている。まるで昔話のお寺みたいだ。向こうに見える山々も雪化粧。
 吐く息は白い。ときどき鳥のさえずりが聞こえてくる。
 春が近づいているのかな。30分ほどたたずむ。
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 一番奥にある法堂は説法の道場だそうで、禅師様がお座りになるであろう台座の上には金の装飾品がこれでもかと垂れ下がり、薄明かりの中で怪しく光る様子は、さながら極楽浄土。不思議な気持ちになりながら、30分ほどたたずむ。

 そして、永平寺のご本尊、釈迦牟尼仏が祭られているのが、その下の仏殿。
 この仏殿が、慎ましやかでありながら、何となく異国感を漂わせている、なんともシンとした空間であった。
 三方に彫られた欄間には、禅宗の逸話を図案化したという彫刻が12枚もはめ込まれていて、それを見ているだけで楽しい。正面の布は開かれていて、お釈迦様がちらりとお顔を覗かせている。
 正座して正面に座っていると、時々は団体の観光客がどやどやとやって来るものの、皆あっという間に引き上げるので、雪で雑音がかき消されるなか、静寂の世界のなかでお釈迦様と2人きりになる。
 肯定も否定もせず、姿勢を正したまま微動だにせぬお釈迦様にいろいろ報告をし、「そうですか。頷いてはくれませぬか」なんて突っ込みながら(笑)、気がついたら1時間くらいお話をしていた。さぞかし、信心深い(と言うか、怪しい)女一人旅と思われたことだろう。
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 さて。身体が芯から冷え切ったところで下山。
 さっそく門前のお食事どころで、あったかい「永平寺そば」をいただく。
 まぁ、なんて言うか、普通のお蕎麦だった。
 「永平寺ぜんざい」ってのもあったので、ついでに注文してみる。こちらはもちの代わりにゴマ豆腐が入っているらしく、微妙かなと思ったら意外に美味。
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 その後、たまたまタイミングがあった別の先輩が車で迎えに来てくださったので(ありがとうございます)、東尋坊まで連れて行ってもらった。東尋坊と言えば「自殺の名所」みたいになってしまったけれど、「東尋坊タワー」まで建っていて、実は立派な観光地なのだ。お土産やさんもたくさんあって、そこにぶら下がっていたカレイの干物を購入して帰る。
 ちなみに自宅で食べてみたところ、たいへん味わい深い美味しさだった。特にキモの部分など最高である。

 そんなわけで、福井も大満喫したのち、夕方には金沢へ到着。先輩とは別れて、ひがし茶屋街近くにある古本+喫茶『あうん堂』さんへ向かう。
 『あうん堂』さんも、「そらあるき」の編集スタッフの方のお店で、長屋の自宅1階を古本屋と喫茶店にして営まれている。本の品揃えも、なかなか素敵。トイレをお借りしたら、なんとトイレ内にも魅力的な本がたくさん並んでいる。「これはトイレで読めってことか?ここから持ち出して購入するのか?それは微妙かも・・・」と悩んでいたら、本棚に貼り付けられて取り出せない仕組みになっていた。ディスプレイだったらしい。
 珈琲は、こちらにも「二三味珈琲」があったので、迷わず注文(後で調べたら、二三味珈琲が飲めるのは、こちらと「collabon」の2店だけだったらしい)。美味しいねぇ。店員さんに聞いたら、やはり「能登の舟小屋で焙煎しました」というお答えであり、なんか分かんないけど、いい感じ。

 そして、この日の晩ご飯である。
 『あうん堂』のご主人と来店していたお姉さんに、「安くて、美味しいものが食べれて、一人でも入れるところ」を聞いてみたら、2人そろって「それなら、『長平』へ行くといいよ」と言う。「おでん屋。酒は黙って燗をつけてくれる。小鉢も充実。安い。おにぎりが美味しい。女一人でもすごく楽」。ほう、ほう。まるで旧知の仲のように、私の好みをピタリと当ててくださる。「そこへ、行きます!」

 オレンジ色の街灯が灯り始めた主計町茶屋街から、細い坂を登ったところに、おでんや「長平」はあった。何のことはない普通の居酒屋で、おかみさん2人がカウンターで迎えてくれる。決して「小ぎれいな」店ではない。すでにサラリーマン4人組みが盛り上がっており、その後に常連らしき中年女性2人組が来店。
 カウンターには大鉢があって、その中から、バイ貝の煮付け、鰯のぬたを注文。他にも鯵の南蛮漬け、ナメコ、小エビと小魚のから揚げ、カブの酢の物など。全部食べてみたいけど、グッと我慢。日本酒は、コップに燗酒がなみなみと注がれる。
 バイ貝もぬたも、たっぷりの量があり、それらをつつきながら、金沢弁のおしゃべりに耳を傾けつつ、美味しそうに湯気をあげるおでん鍋を見つめる。
 おでんは、いものこ(里芋)、焼き豆腐・・・それから、鍋にプカリと浮かぶ黒い物体、しいたけを注文。
 しいたけは「能登115」というブランドらしく、厚さが2センチほどもある。「手毬しいたけ」とも言うらしく、まさに手毬のように丸々していて、かぶるとジュワっと、まぁ美味しい。
 しいたけも大きいし、いものこは2つもついてきたし、焼き豆腐も1丁はありそうな大きさだし、いい気分にお腹いっぱいになったところで、お隣のご婦人と店のおかみさんが「がんも、ちょうだい。○○豆腐店のやつ?」「ちがう。○○豆腐店より、もっと美味しいとこの」と話しているのが聞こえてくる。そして出されたがんもが、とっても大きくて、とっても美味しそうなのだ。あああぁぁ、がんもが私を呼んでいる。
 というわけで、「私も、がんもくださーい。日本酒ももう一杯くださーい。」

 さてさて。最後にお勧めのおにぎりを食べねばならない。お腹いっぱいだけど、後悔を残して大阪に帰りたくない。
 「あのぅ、こちらを紹介してくれた方が、『おにぎりが美味しい』と言っていたので、どうしても食べたいのですが、小さいのちょっとだけ、握ってもらえませんか?」と聞いてみたら、にっこり「いいよ」と言ってもらって、おにぎりまで平らげて、お会計は2800円だった。なんと、まぁ。
 あー、おいしかった。

 ほっこり幸せな気分になり、ふらりふらりと宿まで30分、歩いて帰る。
 『あうん堂』のご主人からは、バー『一葉』へもぜひ行ってみるようにと言われたが、これは次回の訪問のときにとっておこう。ちょっと、いくらなんでも、食べすぎだからね。
 
 
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# by bag-tentomusi | 2012-02-13 09:29

北陸うまいもん道中 その1

 金沢へ来たのは、2回目だ。

 1回目は、地元紙「北國新聞」採用試験を受験すべく、大学生のときに来訪した。
 そのときの筆記試験の作文のお題が「ケイタイ電話」で、「ケイタイ」の漢字が急に思い出せなくなり頭が真っ白になって、散々な結果のまま近江市場と兼六園をふらつきついたというほろ苦い記憶がある。まぁ、当時は「北國新聞」が「キタグニ新聞」ではなく「ホッコク新聞」だということすら分かっていなかったので、例え面接に進んでも「キタグニ新聞は・・・」などと言って恥をさらしていたであろうから、さっさと筆記で落ちておいて良かったのかも知れない。

 そんな懐かしい金沢へ里帰り中の先輩が、「おいで」と言ってくださったので、今回は遊びに行った。
 当時は大学4年の秋くらいで、「金沢なんて2度と来ないかも知れない。思えば遠いところまで来てしまった・・・どうしよう・・・」と思っていたし、知り合いもおらず「まち」の遊び方なんかも全然わからない小娘だった(当たり前だけど)。10年後に再び「無職」となった自分が、ウキウキワクワク遊びに来るなんて、当時の私からしたら「はんっ!」ってなもんだろうと思うと、何だか楽しい。
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(1日目)
 
 金沢駅にはバスで早朝6時前に到着。
 駅前のアパホテルが6時から外湯をやっているので、アパホテルへ直行。ここは駅前で、露天風呂もあり、「レストルーム」には新聞雑誌もあって仮眠もできるので、夜行バス利用の際には大変よろしい。
 まずは暗いうちにと思って、震えながら露天風呂に行ってみたら、ぬ、ぬるい!
 しばらくしたら温かくなったけれど、ちょっと残念であった。営業前にあわててガスの元栓をひねったのかしら・・・。

 入浴後はレストルームで「るるぶ金沢」を熟読し、ホテルの朝食も頂戴し、「金沢周遊バス」に揺られて「ひがし茶屋街」へ。ひがし茶屋街は1820年に加賀藩が周辺に点在していたお茶屋を集めて町割りした地域で、古いお茶屋さんや町家が残っている。当時の「お茶屋」は商家のご主人だけが出入りを許され、一見さんはお断り。客と店は対等、芸妓だけでなく客にも高い教養と技能が求められ、「お茶屋遊び」のために習い事をしたのだとか。支払いはすべて後の信用ばらいで、その場でお勘定なんて無粋なことはしない。なかなかハードルの高い粋な遊びだったのだ。
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 そんな表通りから少し外れたところに、天保元年創業の「高木糀商店」さんはひっそりとある。
 こちらで味噌の仕込みをさせていただこう!というのが、今回の旅の主目的。先輩と落ち合い店に入ると、高い天井に梁がむき出しの店内には、香ばしい大豆の香りが充満している。店内には若いお母さんたちと子どもがたくさん。店のご主人や奥さんも、私と同い年で頑張っておられるのだ。
 さっそく、持参した真っ白の割烹着(刺繍つき!)と手ぬぐいを着用し、腕まくりして作業!・・・と思いきや、そうではなく、小上がりに座り込んで、昨年のお味噌をお湯に溶かしていただきながら、大豆の香りと蒸気を胸いっぱいに吸い込みつつ、子どもたちと遊んだり他の方とおしゃべりしたりする。ゆるい。
 ちなみに金沢弁は、語尾が「○○でぇ、○○だからぁ」と伸ばして上がるようで、何だかちょっと「コギャル」っぽい(失礼!)。「え?大阪から?(お味噌やさんは)京都とかにもあるんじゃないですか?」と数人に言われる。言われてみれば、確かにそのとおり。
 お味噌作りだが、最も面倒だと言われる大豆を蒸して潰す作業はすべてお店の方がやってくれるので、私たちは名前を呼ばれたら土間にいそいそと出て行って、ホカホカあったかい大豆ペーストに塩と糀を混ぜ込んで、丸めて、容器にぶち込むだけ。「はい、できましたね」とご主人に笑顔で言ってもらったら、樽をかかえて小上がりに戻り、またしゃべる。まったくもって、ゆるい。
 そんなこんなで何の努力もしないまま、1升分の味噌はできあがった。今年用の味噌と、塩麹用の麹も少し、それからお土産にと蒸した大豆も分けていただいて、樽をかかえて大阪まで帰ってもいいんだけど、これは送ってもらうこととする。
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 さて、一応労働したことだし、お待ちかねのお昼ご飯は「高木糀商店」の若い夫婦のご紹介で、さらに路地を奥深く進んだところにある『畑の食堂ごくらく屋』さんへ。
 町家のようなところで若い一家がされているお店。木の香りがするロフトのような2階で、地元の野菜をふんだんに使ったランチがいただける。先輩のお友達も合流して、昼ビールで乾杯。うまーい。
 お料理は、「太陽の恵セット」というのを注文したのだけれど、玄米ご飯にカレー、パン、いっぱいいっぱいのお野菜のお惣菜が山盛りになっていて1000円は安い!大丈夫か?と心配したくなる。そして、ものすごく美味しかった。朝ごはんのバイキングを欲張りすぎたことを、今さらのように後悔する。

 お昼ご飯のあとは、今度はお菓子を求めて徘徊。地元の方お勧めの『月天心』さんへ行くが、ここは「普通のお宅」といった感じの店構え。すでにほとんどの商品が完売しており(昼過ぎなのに!)、「豆かのこ」を購入。これは、お土産。
 その後、ひがし茶屋街の重要文化財であるお茶屋『志摩』にて、庭園を眺めながらお抹茶ときれいなお茶菓子をいただく。ふーむ、べつばら、べつばら。
 
 その後、先輩たちとは別れて、もう少し町のなかをウロウロ。「金沢のアメ村」と紹介された「タテマリ通り」を歩き(「アメ村」と例えるには、だいぶ無理がありましたが(笑))、にしの茶屋街にも足を伸ばす。
 最後は、雑貨+喫茶『collabon』さんへ。

 昼間に和菓子屋『月天心』を訪れたとき、店頭にさりげなく雑誌『そらあるき』が置いてあったのを見つけた。「そらあるき」は、金沢のあれやこれやを取り上げた小さな雑誌で、だいぶ昔にその存在を知ってから、密かに憧れていたのだ。「うぉー!『そらあるき』やん!」と興奮していた私に、「それなら、バックナンバーそろってるし、店の雰囲気も好きそう」と先輩が紹介してくれたのが、『collabon』さん。お店の方は実は「そらあるき」の編集スタッフでもあるようで、雑貨や素朴な雑誌が置かれた店内は、「何時間でもいれちゃう」雰囲気。
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 そして!特筆すべきは、そちらでいただきた「二三味(にざみ)珈琲」の美味しさ。珈琲が「しみじみ美味しい」と思うことって、実はあまりないんだけれど、これはしみじみ美味しかった。お店の方に聞くと、「能登の漁師小屋で焙煎しているんですよ」と、それが味にいかなる影響を与えているのかイマイチよく分からない説明が、またなんか、よかった。

 いやはや、金沢とってもいいところだねぇと思いながら、夜は先輩と駅ビルのお勧め回転すし屋さん『もりもり寿司』へ。金沢でお寿司。もはや言うまでもあるまい。
 あー!ウニ食べるの忘れてた!!キィー!!
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# by bag-tentomusi | 2012-02-12 19:14

北陸前夜

 退職後、時間があるのでこれまで行けなかったような研修や勉強会へちょこちょこ参加したりしている。
 いちいち所属を聞かれて「無所属」と答えるのに、少し居心地悪く感じながらも、組織を気にすることも名刺交換もない研修は、いいものである。

 この日は、所属する職能団体主催の研修会へ参加。
 「異質」とされるモノが社会の「安心」のためにどのように排除されてきたか、私たちは小さな「人権侵害」にいかに敏感でいられるか―。先輩たちの話は「基本」とされることばかりだったけれど、私がこの仕事に就く前に「面白い(という表現は不適切かも知れないが、私は「面白い」と思う)」と感じた感情そのままに、話を聴くことができた。
 

 これまで自分の時間と能力と感情のほとんどを注ぎ込んできた職場を離れてからしばらく、何となく「逃げたやろ」「弱虫」というささやきが頭から離れなくて、参った。離れたかったから離れたのであって、前向きな理由も後ろ向きな理由も付けるつもりはなかったのだけれど、それでもささやきは自分勝手に聞こえてきた。
 でも、この日の話を聞きながらふと「自分はバーンアウトしたんだな」と、素直に受け入れられたような気がする。
 
 3年ほど前にも、長くいた現場から異動を言われたときに「離れようかな」と思ったことがある。
 けれども異動の最後の日、皆が帰った後に自分の私物をダンボールに詰めようと思って引き出しを開けた瞬間、今まで出会った人のことがそれこそ走馬灯のように駆け巡って、涙が止まらなくなった。自分でも驚いた感情で、「あぁ、私、この仕事が好きなんやなぁ」と思った。そのとき、この感情には忠実でいようと思った。それは、これまでも今も、変わらないでいる。

 研修の最後に、グループワークと言う名の「感想とグチの言いあいっこ」みたいな時間があり、初めてそういう話を言語化してみた。ファシリテーターの先輩が「それがあなたの『価値』と言える部分だから、大丈夫だと思いますよ。また戻ってきてくださいね」と言ってくれて、なるほどこれが「価値」かと思った。 
 バーンアウトしたことは「カッコいい」ことではないけれども、「恥ずかしい」ことでもない。なのに、退職にもっともらしい理由をつけたかったのは、自分だったんだろう。

 研修の終わりに、先輩に飲みに連れて行ってもらった。 
 職場を離れて初めて、同業者の存在をとてもありがたく感じている。同じ窓から世の中を眺めている(であろう)仲間の存在に、救われている。自分がしてもらった親切は、いつか返せるようになれるといい。

 あったかい気持ちになりながら、夜行バスに乗り込む。
 明日から金沢。

    雪の金沢城公園。
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# by bag-tentomusi | 2012-02-11 03:32

瀬戸内を走る

 北九州にて受けたいと思っていた講習会があり(京都でもあったが、仕事で行けなかった)、博多の祖母の家にも寄ることにして、参加することとした。

 せっかく時間もあるし、お金もないし、在来線を使って行ってみることにする。大阪から山陽本線を使えば、12時間で到着する予定だ。

 まだ学生だったとき、憧れの東京へ行くのに在来線をよく使った。東海道線は東京から熱海あたりまでや、名古屋周辺は乗客が多くて、あまりのんびり感がないのと、名古屋から大阪までが琵琶湖をまわるために近いようで遠くて、大抵は(復路は)大垣あたりでへこたれて来るのが常であった。
 今回、10年越しとは言え、山陽本線を使うのは初めてのことだ。

 前日、遅くまで友人と飲んでいたため、「もう、新幹線で行っちゃえば?」という内なる誘惑に何とか勝利して起床。自宅を8時前に出発。
 まずは、大阪発9:04発、姫路行きに乗車。姫路行きは所用で何度か乗っているので、珍しくはない。
 姫路は10:05着。播州赤穂行きに乗り換え、21分で牡蠣で有名な相生へ到着。この近さであれば、日帰りで牡蠣を食べに来る人が多数なのも納得である。
 相生からは10:29発三原行きに乗り換え。ここからフカフカだったシートの電車とはお別れ、直角の硬いシートの各停となる。三原に着くまで3時間の道のりだ。海沿いを離れて、山の中へと入っていく。不思議なことに、このあたりの山は何となく白っぽい山肌をしていて、その谷間を列車は走っていく。谷を抜けると、刈り入れの終わった田んぼが広がり、その両脇に山がそびえているという景色が、少しずつ様子を変えながら続いている。まだ午前中だ。お日様はてっぺんより少し低いとことにいて、夫婦が田んぼに出て作業をしている。「桃源郷だなぁ」と思ったのも束の間、あとは深い眠りの底へ引きづりこまれ、気がつくと正午。持参したお弁当をボソボソといただき、三原が13:23着。

 さて、三原駅では向かいのホームに止まっていた岩国行きへ走る。ここいらは「車内の温度を保つため」、扉は自動では開かないので、「よっこらせ」と開けて入る。久しぶりなので「手動かー、風情あるねー」と思うけど、まぁ、自分の田舎もそんなもんだった。開けっ放しにしておくと中の人が寒いのだ。13:27に出発。
 「岩国」と聞くと、さすがに遠いところへ来た気持ちになる。錦帯橋、それに基地の町。
 ここからは、乗客の言葉のなまりも変わり、いかにも港町な雰囲気の建物や、広い穏やかな河口が見えたりと、海が近いことを知らせてくれる。かつての繁栄は想像できるものの、何だか寂れた感じで寒そうな町々を約2時間、ボンヤリと眺めながら過ごす。

 岩国は15:34着。再び向かいのホームへ走り、新山口行きが15:36発。
 ここからの道のりが良かった。山を抜けたと思うと、左手には凪の瀬戸内と、大小の島影。列車は海と並行して走り、ときに海岸線ぎりぎりまで接近する。濃いエメラルドグリーンの海底の岩まで、列車から見える。
 16時をまわるとだんだんと陽が傾き始め、西の空を朱色に染めながら、太陽は海面に反射する。特に山口県に入ってからは工場も減り、遠くの島影が幻のように大小見えて、神秘的ですらある。
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 瀬戸内の海岸線はその昔、自然浜にずっと塩田が広がり、人々はそれで生活していたのだそうだ。ミネラルをたくさん含んだ「塩化ナトリウム」ではない自然塩は、高血圧などを引き起こさない。それが、塩の専売制がしかれ、塩田では食えなくなり、その土地は買い取られ、石油コンビナートが乱立し、それが高度経済成長を支えたと聞いた。代わりに病気の人は増えた。原発や米軍基地と同じ仕組みに思えてならない。

 今、瀬戸内には、ほとんど塩田が見られないけれど、それがずらっと広がっていた時代は、どんなだったのかなぁと思いながら、列車に揺られた。
 内海と島々が流れ逝く車窓は本当に楽しくて、景色は素晴らしかった。
 ここでの暮らしの多くが、豊かな瀬戸内の恵みからだけではもはや成り立たなくなっているということに、私たちは思いを馳せないといけないと思うし、経済成長の恩恵を受け、そんな社会の仕組みを「よし」としてきた自分たちにもその責任の一端が課せられているのだという自覚なしに、「きれーですね。守ってほしいですね」なんて言うのは、おそらく無責任だろう。
 それでも、この海にもう一基、原発を作ろうとしていることは、とても愚かなことに思える。


 海面を飛んでいるような気分になること2時間。新山口には17:34着。1分間で下関行きへ乗り換え。
 ここからは通勤や通学の乗客も増え、日没で車窓も見えなくなったため、思考にふけっては眠りに落ちるの繰り返し。
 下関18:41着。小倉行きが18:59発。
 小倉19:12着。荒木行きが19:29発。
 博多には、20:38の到着であった。

 旅のおともに一応は本も数札持ち込んだんだが、12時間、ほとんど車窓を見てぼんやりと考え事をしていた。いつものことである。
 景色や温度や臭いや出会う人々、自分の気持ちや身体の調子、そういうものたちの変化を、じっくりと舐めるように味わうことに、長旅の醍醐味はあると考える。 
 
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# by bag-tentomusi | 2012-02-01 01:21


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


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