あとから来る者のために

 福井県小浜市の住職さんで、中島(上に「山」がつく)哲演さんとおっしゃる方がいる。
 小浜市は「原発銀座」のなかに位置しながら、ただの一つも原発の立地を許してこなかった市だ。
 中島さんはそこで長年、運動をしてこられた方で、以前に何かのドキュメンタリーで拝見してから、一度お話を聴いてみたいと思っていた。
 
 先日、知人が中島さんをお呼びして講演会をするので受付を手伝って欲しいと言うので、受付がてらお話を聴きに行った。
 中島さんは、雪の降る小浜から黒い長靴と袈裟という姿で来られていた。
 
 福井県は決して、原発を黙って受け入れたのではない。
 「叫びたいほど反対です」と言った主婦の声に代表されるように、大規模な反対運動があった。
 しかし、2600人のデモがあった大井町でも、「もの言えばくちびる寒し」、最後にはたった4人の住民が沿道から応援するのが精一杯という状況になる。
 今、福島第一原発の残骸は、ただの放射能とコンクリの残骸ではなく、「システムの残骸」に、中島さんには見える。「麻薬患者の末期症状」のようになってしまった地元。その「ミニ原子力ムラ」と、戦時中、沖縄に押し付けられる米軍基地、そして「今の空気」との共通点。

 私に宗教はないが、中島さんのお話は、先祖によって「生かされてる」ことを感じさせるものだった。
 「何もない」とされた福井で、命をかけて声をあげた人たちがいたということ。その事実に、有難いような、申し訳ないような気持ちになる。
 そして、40年間で50万人の原発労働者という「ヒバクシャ」の存在。
 きっとそういうことを伝えることが、教育なのだと思う。
 「あとから来る者」のために。
 

 
[PR]
# by bag-tentomusi | 2011-12-27 21:18

イルミナイト

 クリスマスの夜。
 
 太陽の塔が楽しいことになっています。

 岡本太郎生誕100周年の「イルミナイト」にて、まずは岡本太郎「格言」がコマ送りに。
b0180333_21131829.jpg
 
 
 それから、こんなことや、
b0180333_21135664.jpg


 こんなことに。
b0180333_2115180.jpg

 富田林→松原の友人宅→心斎橋で散髪→吹田で岡本太郎・・・と、大阪を南北に縦断した一日であった。
 寒波到来でものすごく寒く、「Taro」を愛する友人と、帰りは梅田の「たこ梅」にて、おでんと熱燗。
[PR]
# by bag-tentomusi | 2011-12-25 21:02

城崎は雪だった

 クリスマスの連休に、城崎へ。

 知ってる人や知らない人たち総勢8名で、バスにて出かける。

 到着後、出石そばを「夜に影響を及ぼさない程度に」いただき、チェックインまでは掘りごたつのあるカフェで、ソフトクリームとコーヒーをいただいてまったり。
 チェックインにて浴衣と丹前に着替え、下駄をつっかけていざ、外湯めぐりへ。

 まずは「御所の湯」の広い露天風呂でゆっくりと温まる。
 続いて「まんだら湯」。御所の湯が、整った温泉であるのに対し、「まんだら湯」はお風呂屋さん的な雰囲気で、中央にお風呂がでんとあるだけな感じは、古い湯治場を思わせる。この薄暗く微妙に狭い感じは好きで、3人しか入れない露天の桶風呂に、見知らぬ人と話しながら譲り合いながら入ることも楽しかったんだが、それにしても連休の初日。あまりに芋の子を洗う状態にて、早い目に退散。
 この時点で、あたりは雪がしんしんと降り始める。
 赤い傘さして、川沿いの雪道をおしゃべりしながら、火照った身体で歩く楽しさよ。
 ・・・が、身体はともかく、下駄履きの足が冷たい。もうだめ、足が凍る!ってところで、ようやくたどり着いた駅前の「さとの湯」へ。ここは空いていて、現代的な感じのお風呂。しっかりと身体を温め、夜のビールをより美味しく飲むために水分を我慢。ほっこりした気分で、食事の待っているお宿へ。

 宿では、「もう当分、カニはいりません」ってくらいカニをいただき、地酒の燗酒もいただき、大満足となる。
 その後、宿の前にある「一の湯」の洞窟風呂で一人ぼんやりと物思いにふけって、この日は就寝。
b0180333_20594982.jpg
 翌日、窓をあけるとあたりは雪景色。
 朝食前、まだ足跡のついていない雪の上を、シャクシャクと歩いて「一の湯」へ。朝もやの中の洞窟風呂は、幻想的な雰囲気である。
 朝食は、湯豆腐が美味しい。あぁ、日ごろも朝から湯豆腐を食べるような、余裕ある生活がしたいなぁ。
 その後、皆さんがゆっくりと見支度をしている間に、一番はずれにある「鴻の湯」を目指す。
 雪の中で変わっていく町を眺めながら、一人ただ黙々と温泉を目指して歩く。そういう時間が好きだ。

 「鴻の湯」ではのんびりするほどの時間はなかったのだが、雪が降り積もるなかでの露天風呂は、とても静かで凛とした時間であった。
 

 
 
[PR]
# by bag-tentomusi | 2011-12-24 20:26

師走

 日曜日は、「知彩庵」にて忘年会。
 唯一、まともな暖房器具のある居間の配置換えをして、「鍋宴会仕様」にしたら、なかなかいい感じとなった。
 これなら、お客様が来ても、凍えずに過ごしていただけそうだ。
 ご予約、受け付けております。
b0180333_23403828.jpg
 「知彩庵」にしては、上品な盛り付け。
 実際は、同居人が畑「知彩菜」から凍え死にそうになって採って来た大量の「間引き菜」を、ウサギさんのように食べる。
 豆乳鍋→豆乳キムチ鍋→寺内町の天然酵母パンの店「mameten cafe」のシュトーレンでしめた。
 あぁ、美味しかった。

 さて。
 これから年明けまで、楽しいこといっぱい。
 駆け抜けますよ。
[PR]
# by bag-tentomusi | 2011-12-20 23:41

工場で機械が動くおと

 1週間ほど前の話になるが、私の着物師匠であり料理師匠でもある記者のKさんと、着物師匠のお姐さんに引っ付いて、「新春着物特別号」(?)の取材へと同行した。

 目指すは「臼井織布株式会社」さん。三重県の津市で唯一残る、伊勢木綿の織元さんである。

 着物師匠のお姐さんは、Kさんの新聞に着物コラムの欄を持っていて、来年の新春号でカラーの特集を組む。そこで伊勢木綿の織元を訪ね、ご主人のお話をうかがい、記事を書く予定なのだが、私ともう一人の同行者は、「着物ライフを楽しむ(一応)若い人」としてのモデル(え?違う?)として登場するという、そういう段取りのようだ。

 さて、近鉄特急で2時間ほど、津市へ。ここからは車で、寺内町にある「臼井織布株式会社」さんへ到着した。
b0180333_234871.jpg

  昔このあたりで栄えた伊勢木綿は、名古屋よりもむしろ江戸に向けて、多くの製品を送り出してきたそうだ。戦後は寝巻きが大繁盛し、織元の多くは寝巻き用の布を織ってきたのだが、最近はそれも衰退。今では臼井さんのところが一軒残るのみなのだという。臼井さんの会社も、お世辞にもきれいだとは言えず、伊勢湾台風の傷跡がまだ残っているような、古い建物だった。入り口を入ると土間があって、上がったところはガラス戸のある畳の部屋になっており、おばあさんが店番をされている。土間の奥が、工場だ。取材の約束はすっかり失念していたと言うご主人が、職人らしい嫌味のないムッツリ加減で、工場の中を案内してくださった。

 最初の部屋は、糸の棒がたくさん並んでいて、糸が一箇所に集められていっている。たぶん、縦糸をよっているのだと思う。ほとんど木製の機械で、それが音をたてて、一斉にまわっているのだ。ネズミのおばあさんが頬かむりをして、番をしてそうな、そういう雰囲気のするお部屋。白の糸の鮮やかさが、目に焼きつく。

 次のお部屋が、いよいよ「織り」の部屋だ。
 扉をあけるとそこは、「シャン、シャン、シャン!」という織機の音。小学校だかの教科書に載っていた「トヨタ織機」が20台ほど現役で動いている。織機の動きはすばやくて、セットされた縦糸の間を、横糸がすごいスピードで、右に左に駆け抜けていく。ときどき動きが止まると、おばちゃんがそんなに慌てずにやってきて、手を加える。そしてまた、「シャン、シャン、シャン!」。織機はすべて、大きなベルトがまわる力で動いているのだけれど、その力が無数の歯車に伝えられて、小さな微調整が行なえるような仕組みになっている。100年前から変わらず、修理を重ねて使っているそうだが、100年前にこの織機を作った人たちと、初めてそれに触れた職人たちの熱気たるや、どんなものだったろうか。

 私の世代でもすでに「機械」と言えば、コンピューター制御された「仕組みの見えないもの」を想像する。今は織機も、コンピューター制御されているものがほとんどらしいが、それでは動きが早すぎて、化学繊維でないと糸が切れてしまうのだそうだ。それに、仕組みが見えないから、自分たちで修理して100年も使い続けることなんて、とてもできない。
 臼井さんのトヨタ織機は「仕組み」が見える。「機械って言えるのは、ここまで」と、ご主人。

 それに、機械の立てる音が、やかましいんだけれど、心地いいのだ。

 昔、こんな歌があった。
 『静かに耳を 傾けよう
 夜明けに花が開く音
 工場で機械が動く音
 世界の音が 聞こえるよ』

 「工場で機械が動く音」が、どうしてこんなきれいな詩のなかに、象徴的に出てくるのかと、ずっと不思議だった。
 でも、夜明けに織機が「シャン、シャン、シャン」となり始めることに、静かに耳を傾けることは、きっと悪い気分がしないだろう。そして朝には土間に行商の人なんかがやってきて、ガラス戸の奥の座敷に腰掛けて、おばあちゃんと木綿の話をしたりする、そういう一日が始まるのだろう。
 「機械」の音を、初めて聞いた。

b0180333_2334023.jpg
 伊勢木綿は、昔からのデザインを忠実に守って織っておられるそうだが、ポップな柄が多くて、何となく「現代風」でもある。なんとか気軽に着物として着てもらえるように、色んな工夫もされているようだけれど、最後の織元がなくならないようにと願うばかりだ。そのあたりの話になると、ご主人は饒舌になり、たくさんのおしゃべりと、部屋に積まれた反物を何度も広げて楽しんだあとに、まだ織機にかかって織り途中だった布がどうしても忘れられず、お願いをしてそれを一反、分けていただくことになった。

 綿花が糸になり、縦糸ができて、横糸が加わって、布になって、それを選んで、寸法を伝えて、誰かが縫ってくれる。それを買う。
 「買うという行為は、そのモノに対するリスペクトの最大の表現のひとつだと思っています。
 そして、そのモノを通じて、作った人間との共有の感情を得ます。
 すると、モノのもっと本質に触れていくことが出来ると考えています。」
 昔、「GEODESIQUE」さんでアクセサリーを買ったときに、言っていただいた言葉なのだけれど、本当にそのとおりだと思う。
 


 


 
 
 
[PR]
# by bag-tentomusi | 2011-12-18 02:54


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


by bag-tentomusi

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30

b0180333_232545100.gif

外部リンク

以前の記事

2013年 11月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月

検索

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧