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小袖たち

 雨な一日。
 テレビで「ニュースステーション」を見てたら、天気予報のお姉さんが、「私は今日、美容院に行ったんですが、せっかくセットした髪の毛が広がってしまって困りました。明日も一日雨です」と言ってて、しばらくポカンとする。あんたが美容院へ行ったことを、わざわざ公共の電波を使って聞かされてもね。彼女の意図で言わされた言葉ではないかも知れないけど、「ニュースステーション」がそういうコメントを「庶民感覚」だと思ってるなら、なんか気持ち悪い。普通に、お天気だけ教えてくれたらいいし、「感じる」自由は私にください。
 ニュース番組のコメント過多は、すでに犯罪の域だと思う。そんな「既製品小袖たち_b0180333_0594490.jpg」はいらないです。
 
 大阪市立美術館で、少し前まで「小袖展」をしていた。ぜひ行きたいと思いながら最終日を迎えてしまい、仕事で美術館近くまで行くと言う同僚に頼み込んで、分厚いカタログだけでも購入してきてもらう。江戸時代の小袖や小物、ひな形(昔のファッションカタログみたいなもの)がたくさん載っていて、こいつと一緒だと2ヶ月は楽しく暮らせるだろうと思える代物。こういう本が手に入ると、それをじっくり眺めるだけのために、列車に乗ってどこかに行きたくなるが、今のところは叶いそうにないので自宅でちびちび眺める日々。
 現存する「ひな形」は白黒の印刷で、昔の人たちはそれを眺めながら職人さんと話をして、柄を決めていったんだろう。ひな形から想像する着物と、実際の出来上がりは(反物の時点と縫い上げた時点でも)かなり違っただろうし、注文から完成までも長い時間を費やしただろうから、それはそれは楽しい時間だったろうと想像する。
 小説『大草原の小さな家』シリーズの『大草原の小さな町』で、ローラと母さんが町で布を買ってきて、メアリーのよそいきのドレスを少しずつ縫い上げる日々が描かれている大好きな場面があるのだけれど、そんな時間が江戸の日常にもあふれてたんだろうと思うと、楽しい。
 「既製品」がまだなかった時代の庶民のお洒落は、たくさんの想像力と膨大な時間に彩られたものだったんだろうと思う。それは作る人との信頼関係の上で成り立つものでもあって、「いいもの着てますなぁ」とほめられたとしたら、「いい人と付き合ってますなぁ」「いい想像しましたなぁ」「いい時間を過ごしましたなぁ」という意味を含んだんだろうと考えると、なんかいいな、と思う。
by bag-tentomusi | 2009-06-11 01:10


「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば


by bag-tentomusi

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