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人生は楽しく、人はやさしく、世界は美しい

兵庫県上郡町で、古民家を再生させる作業のお手伝をさせてもらいに行く。
江戸時代末期に建てられたという民家で、今はトタンが張られているけれど、昔は茅葺だったと思われる農家。20畳ほどの一間に、離れで台所と小部屋、浴室、物置が残されているけれども、ほとんど廃墟に近い状態だった。それでもコツコツと手を加えて、だいぶ綺麗になったのだと言う。
山側と谷側にある引き戸を開けると、気持ちのよい風が吹き抜ける。谷側の縁側近くに寝転がって外を眺めると、田植えの終わった水田が美しい。山側は人家だけど、屋根と土地の勾配がうまく目隠しになって、これまた寝転がると気持ちが良い。
屋根裏に上がると、立派に黒光りする梁が横たわり、急勾配の屋根は黒くなった木材が組まれて支えていて、藁が敷き詰められている。屋根裏には、古い文机や鏡台や奈良県の置き薬箱が残されていた。置き薬は「薬うつづ(右から読んで、「頭痛薬)」)と書かれていたりして、薬袋のデザインの素敵さににしばし興奮する。

今は、たくさん出てきた古材を再加工して「厠」を作っているところ。16歳から大工さんをしているという方に教えていただきながら「墨つけ」「ひかり」「刻み」「ほぞ穴つくり」などをした。ちなみに、墨つけは木材に印を付けていくこと。墨つぼと糸を使って印を打っていく様子は、見ていて感心するばかり。それからカンナで穴を開けたりして、木材と木材を組めるような凹凸を作っていく。
私は、穴(「ほぞ穴」というらしい)を開ける作業をさせてもらったが、貫通させるのに3時間くらいかかった(プロは15分くらいで開けるらしい)。どことどこを組ませるのかという計算も私にはさっぱり分からなかったが、古い日本家屋がこうした緻密な計算と細かい膨大な作業で建てられてきたのだと思うと、感激する。
大工さんの作業は、見ていて飽きなかった。「ここは、どうやったんですか?」「ん?だいたい」。「ここは、どれくらいですか?」「ん?だいたい」・・・(笑)。「だいたいでやった方が、いい仕事できたりするんやなー」とお仲間どうしで笑ってらっしゃって、職人さんってすごいなぁと、改めて思う。もちろん私は「だいたい」では出来ないので、ちゃんと教えてもらう。

写真は「糸巻き」。たくさん転がっているのを一ついただいた。農業の合間に糸を紡いだのかな。江戸時代の末期から、どんな人がどんな暮らしを送ってきたのだろうか。
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by bag-tentomusi
| 2009-06-21 23:59
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「知彩庵」より。日々の咀嚼と、紡ぐことば
by bag-tentomusi
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